Paul Auster "Timbuktu" 61~72p -7

Willyはとりとめのないヨタ話で疲れ果て,再び眠り始める。今度こそ,主人の最後かもしれないと恐怖しながら,ともに眠りにつくMr.Bones。そこから彼の夢シーンが続く。
Mr.Bonesの夢では,Willyのコンディションは回復し,母について語ったり,詩を奏でたり,学生時代のルームメイトAnsterだかOmsterだか(実はAuster?)について語ったりする。特に,友人Anster(?)は作家をしているということもあって,彼が自分のために詩の出版社を探してやると言ってくれたことが忘れられない。実際,Willyは原稿を送ったことすらない。だが,
…it proved that he could have been published if he'd wanted to be--he just didn't want to, that's all…
と,あくまで自分がそうしようとしなかったからだという点にこだわるWilly。また,Ansterが遙か昔に教えてくれた,イタリアに住むある犬のために開発されたという「犬用タイプライター」も気にかかる。Mr.Bonesにリスニング・スピーキングだけでなくリーディングも教えておくべきだったと後悔したりする。
…と,そうこうしているうちに,突如二人組の警官がやってきて,Mr.Bonesは追われ,Willyは救急車で運ばれることとなる。Mr.Bones自身,これが夢なのか現実なのかがわからなくなってくる(当然,読者もだ)。しかも,救急車に運ばれる主人とそれに同行できない自分への悲しみのあまりか,Mr.Bonesの精神が「犬」と「ハエ」に分割される。「犬」部分の彼は相変わらず沈思黙考を続けているが,「ハエ」部分の彼は迷わず救急車にくっついて「主人」の病院までついて行くことになる。
救急車に運ばれる過程で,Willyは救急隊員に向かってCalvert3-16に住むBea Swansonに連絡を取ってくれと虫の息で頼み込む。と,病院に着いて3時間後,彼女は簡単にやって来るわけである(ああ,あの苦労は何だったのだろう!)。Willy自身は,数時間に及ぶ栄養点滴と抗生物質とアドレナリンの大量投与によって,その日の夜は奇跡的な回復を見る。しかし,その翌日には,静かに死ぬこととなる。
という予言めいたことが記されたあとで,引き続き,その詳細が語られるのだろう(オースターの典型的な語り方)。話がようやく進み始めたという感じ。おもしろくなってきたー。