大通りデートなのか?

夫がじっくり本屋で過ごしたいというので,大通りに出ることにした。といっても大型書店があるわけではなく,せいぜい2階建ての「さわや書店」くらいだ。それでも,みたけの「エムズ書店」やイオンの「銀河書店」に比べると好みに合う本があるそうで,子供に邪魔されず思う存分本を探したかったらしい。しかし,大阪の「旭屋」「紀伊国屋」,京都の「ジュンク堂」「駸々堂」で育った私には,ここだけではどうにもモノ足りない。子供の頃から街で時間を潰すといえばまず本屋で,そのあと服や陶器,雑貨などを見て廻り,合間にコーヒーを飲むというコースが定番だっただけに,初っぱなの本屋がこうではどうも調子が狂ってしまうのだ。盛岡は暮らしやすくて大好きな街だが,大型書店でも進出してこない限り,ここに定住することはないだろうとまで思ってしまう。せめて図書館が充実していたらまだしも,それすら泣けてくる状態だ。盛岡の本好きはいったいどうやって過ごしてるのだ!と,街中に出てくるたび同じことを言って怒っているので夫は呆れていた。
昼は書店の隣にあるビルの6Fに入ったバードランドカフェへ。ビルの最上階のせいか建物の一部がサンルーム状になっていて,明るく落ち着ける雰囲気だ。スープ,サラダ,メイン,アイスクリーム,コーヒー(これはドリンクバー形式なのでお代わり自由)がついて750円也。ケーキをつけたら980円なのだが,このところ太り気味なので我慢する。メインは6つある中から,アスパラと鶏のクリームパスタを選んだ。なかなかキリッとした味で最後まで美味しくいただけた。サイドメニューも手抜かりなし。散々文句を言っておいて何だが,こういう値段でこれだけのものが食べられるというのは盛岡ならではだよなぁと思い,気を取り直す。
夫がもう少し本屋を覗きたいというので付き合い,「31歳ガン漂流」をちらちら流し読みする。31歳で肺ガンを宣告され33歳で亡くなった奥山貴宏さんの本だ。彼の生きる姿勢や文章に強く引き込まれる。これは買いたいと思ったが,ガンで亡くなった方の闘病記を今自宅に置くのは良くないだろうと思い留まった。夫はアーヴィングの「未亡人の一年」を買ったようだ。「新潮文庫の新刊」という帯が巻かれてあったためか,「アーヴィングの新作だよ」と言う無邪気な夫に対し,「それは最新刊の2つ前の本だよーん,5年以上前に読んじゃったもーん」と,ここぞとばかり原書読みのメリットを強調するイケズな妻であった。
そのまま街を歩き廻りたかったのだが,夫は目的なくぶらぶらするということにまったく慣れていないようで,「何するの」「どこに行くの」と訊きまくるし,小雨もぱらついてきたので諦めて帰宅することにした。定年後の生活に一抹の不安を感じる。