Mark Haddon "The Curious Incident of the Dog in the Night-time" 216~268p -8 読了

15歳の天才数学少年クリストファーの成長物語ということなのだろうが、読後爽やかとは程遠い。ただ、高機能自閉症というかアスペルガー障害を抱える子どもを愛し、成長を見守ることの難しさがひしひしと伝わってきた。人の感情が理解できず、とことん自己中心的な態度は障害ゆえであるとはいえ、それをそのまま受け入れることは周囲、とりわけ彼を愛するものにとってどれだけ大変なことかと。
現に、彼が母親を訪ねてロンドンに向かった際に出会った人々の大半は、彼のことを「変なやつ」「いかれてる」と突き放してお仕舞いである。地下鉄で線路に下りた彼を命からがら救った人物など、大変な思いで彼を助けたにもかかわらず、悲鳴を上げられ感謝の念などかけらも与えられないのだ。彼の障害を知らぬ他人であればそう感じるのも無理はない。彼の障害を誰よりもよく理解しているはずの母親ですら、感極まって彼を抱きしめようとして拒否されたときにはショックを受けてしまう。
最終章を読みながら、数学の難しい試験に合格し将来の夢を滔々と語る彼に、これだけ周りの人をかき回しておいて勝手なことばかりほざくなと感じてしまう自分と、そう感じる自分を嫌悪する自分がいる。実際、身近に彼のような人がいたら自分はどう感じ、どう付き合うかはわからない。しかしまずはそういう障害の存在を知り、性格やしつけの問題ではなく障害なのだという認識することが必要なのは間違いないだろうな。