Paul Auster "Oracle Night" 38~57p -4

GraceとJohnが亡くなったTinaの弟Richardと3-D viewer修理の話で盛り上がってる最中,突然Orrが激しい鼻血を吹き出す。2階のbath roomを借りて鼻血の処理をした後,ふと続きにあるJohnの仕事部屋を覗くと,そこには先日自分が買ったのとまったく同じあの青いノートが置かれているではないか(やっと話が繋がった!)。驚いて階下のJohnに訊ねると,彼もリスボンで見つけて大いに気に入り,帰国の際に大量に買い込んできたが机に置かれているのが最後の一冊なのだという。偶然の一致に驚く2人。このノートはとても使いやすいのだが,気をつけないと危ないのだとJohnが言う。
Those notebooks are very friendly, but they can also be cruel, and you have to watch out that you don't get lost in them.
でもこのノートの会社は事業から撤退したそうですよとOrr。NYの文房具屋の主人(中国人のChan)から聞いた話。さらに,黒と赤と茶色いのが残っているので良ければ買ってきますよと申し出るが,Johnは青でなければ結構だという。その思いはOrrも同様。なぜ2人の作家がこうも青いノートに心奪われるのか。なぜ青でなければならないのか。
帰り道,タクシーがなかなか捕まらない。やっとの事で捕まえたタクシーに,行き先を伝えたとたんに断られたり。這々の体で捕まえた2台目のタクシーに乗り込んだとき,めったなことでは感情を取り乱さないGraceが静かに泣き始める。慰めようとかけたOrrの手まで振り払う。すぐに謝るGraceだが,Johnの生活の荒んだ様子を受け入れるのがちょっと辛くなってきたと言う。今までの彼女からはとても考えられないような態度。
Something else was troubling her, some private torment she wasn't willing to share with me, but I knew that if I kept on hounding(せき立てる) her to open up, it would only make things worse…
ひどい渋滞で車はなかなか進まない。落ち着きを取り戻したGraceと色の話で盛り上がる。Orrが子供の頃行かされていたサマーキャンプ(その名もPontiacキャンプ!*1)では毎年,赤と白のチームに分かれて期間中様々な競争を行ってきたという話をする。それが14歳の時,Bruce Alderという新しいカウンセラーが来てから,青チームが密かに作られるようになったのだという。青チームに属するのは,能力如何に関わらず,ユーモアを持ち…
They reprezented a human ideal, a tight-nit association of tolerant and sympathetic individuals, the dream of a perfect society.
というような人物。Orrはある夜,そのメンバーに選ばれたということを誇りに思ったのだと。それは言わば,good personnであり,Orrの父の言葉ではhonest manになるし,Johnによるとnot an assholeということになる。ところがその話に,Graceは
Good people do bad things.
と言う。もちろんパーフェクトな人間などいるわけないし,単なる思い出話のひとつに過ぎないよと言うOrrだが,彼女の態度から彼女に何かしら異変が起こったことを感じとる(彼女自身が何かbad thingsをしてしまったのではないかと)。
翌日,Graceは従兄弟と美術館へ。Orrは青いノートに小説の続きを綴る。
以下はOrrの小説。カンザスに行く飛行機の中でNick Bowenは”Oracle Night”を読む。oraclaには神の言葉,審判,予言といった意味がある。
以下,Orrの小説における”Oracle Night”の内容。主人公Lemuel Flaggは第一次大戦で視力を失った元英国軍中尉。傷つき倒れているところを2人のフランスの孤児に助けられて,生き延びる。回復後,2人を連れてイギリスに戻るのだが,彼は視力を失った代わりに予言能力を授かることとなる。子供たちと共に静かな暮らしを望んでいたにもかかわらず,その予知能力があまりに優れているが故に各界で持て囃され,それも叶わない。予言は本人の意志に関わりなく突然訪れるし,望む予言が得られるというわけでもない。彼はBettina Knottという女性と恋に落ちるのだが,結婚直前に彼女が自分を裏切るという予言を授けられてしまう。彼の予言が外れたことはないし,かといってその時点で彼女は無実である。その苦しみに耐えられなくなり,結局Flaggは自分の胸を突いて自殺する。
そんなところまで読み進めたところで,飛行機は空港に到着する。空港に着き乗り込んだタクシー運転手に,地元でいちばんいいホテルへ連れて行ってくれと頼む。corpulent/でぶでぶ太った黒人運転手は,あんたがsuperstitious/迷信深くなければ,Hyattがいいと言う。何でも1年前,ひどい大惨事があったのだが,そのことを気にしないのであれば,いいホテルなのだと。また,Ed Victoryはその日34年間のタクシー業をリタイアするのだと言う。Nickは最後の日の最後の客で,その後はBureau of Historical Preservationの活動を始めるのだと。結局,そのホテルに着けてもらい,そこに2日間閉じこもって,219ページのOracle Nightを4度も読み続ける。

*1:有名なインディアンの名にちなんで名付けられたとか。”Moon Palace”じゃ,車の名前で出てきましたね