Paul Auster "Oracle Night" 57~69p -5

青いノートにOrrが書いている小説の続き。主人公Nickはホテル滞在三日目,ようやく外出する。商店街の洋服屋に飛び込み,当面必要な衣類を購入しようとするが,アメックスのカードが使えない。あらまとVISAを出すと,それもダメ。選んだ衣類を店に返し,ホテルに戻る。妻がクレジットカードをinvalid/無効にしたことに気づく。手持ちの金は68ドル,小切手は持っていない。シティバンクのカードでATMから現金を引き出そうとするが,それも無駄だとわかったとき,はじめて自分がpredicaments/苦境に立たされていることを実感する。
自宅には絶対に戻りたくない。Nickは衝動的に,”Oracle Night”の送り手Rosaに電話をかけるが,留守。留守番電話に,カンザスにいることやら一目惚れしたこと等を告げる。連絡先として,ホテルの名前と部屋番号の他,空港からホテルまで利用したタクシー運転手Edの電話番号(!)を残す。しかしあいにくなことに,Rosaは妹の結婚式に出席するため,その日から一週間シカゴに出かけている。
一方,妻Evaは,当初Nickは犯罪に巻き込まれたかもしれないと心配していたが,次第に失踪当日の様子から,夫がRosaと失踪したのではないかと思い込む。朝夕,毎日のようにRosaに電話をかけるが,彼女はずっと留守。逆上して,最後は彼女のアパートにまで押しかけ,
I need to talk to you about Nick. Call me at onece. Eva Bowen
とscribble/殴り書きしたメモを,ドアの下から潜り込ませる。
その頃,Nickはホテルを出て,名刺を頼りにEdの下宿を訪ねる。Edは想像以上に荒んだ建物に住み,ノックをしてドアを開けたとたんに銃を向けられる有様。有り体に苦境に陥った状況を話し,元タクシー運転手のツテで整備士の仕事を紹介してもらえないかと頼む(ジャガーを2年間いじくりまくっていて,その道には自信があるらしい)。だがEdは
If you meet those qualifications, I'll hire you. At a decent rage.
と言う。そうは見えないかもしれないが,金は持っているのだと。雇い先というのは,名刺に書かれてあったThe Bureau of Historical Preservationだ。
青いノートにここまで書いたところで,Orrは軽い昼食を取り,トイレに行って気分転換に顔を洗う。その時,6時半くらいに戻ると言っていたGraceが疲れ果てlooking wan/青ざめた顔で帰宅する。いっしょに夕食をとる予定だった,彼女の従姉妹でイエール大2年のLilyはそのままNew Heavenに帰ったという。帰ってきた早々,Graceは何度も吐く吐く。「吐くこと」に関する表現がたくさん出てきて面白いのでチェックしておく(よく使いそう)。

vomit=吐く,queasiness=吐き気,nausia is lifting=吐き気が治まる,deluge=大洪水(吐きまくり状態のことをこのように表現),come down with~=be infected~=〜(病気など)にかかる,bug(s)=infection=伝染病

吐き気が治まるとGraceは,自分は昨晩,Orrにひどいことを言った罰を受けているのだと話す。そんなことはないと答えるOrrにGraceは微笑み,あなたはいつも私のことを愛してくれていて,決してガッカリさせないということがわかっていたから結婚したのだと告げる。でも僕は大病を患ってkept man/ヒモ同然だと言うOrrに,
I'm the one who owes you. More than you know -- more than you'll ever know. As long as you're not disappointed in me, I can live through anything.
とGrace。Orrがワケがわからないよと言うと,Graceは
Just keep on loving me.
と告げる。 Orrは,彼女の良心に何かつきまとっているものがあるのだと感じる。彼女をベッドに寝かしつけ,再び青いノートの元に戻る。