ヒトラー〜最期の12日間〜

行ってまいりました。お昼に上映されるのは今週のみ,週末はずっと予定が入ってる,しかも今日は水曜日,とあっちゃ行くしかない!? お昼前に帰ってくる子供たちには,手紙とおにぎりをテーブルに用意して出発。フォーラムに着くと既に開演10分前。ギリギリだ。客の大半はレディースデー狙いの年配女性だが,映画が映画だけにさすがに男性もチラホラと。男女カップル等はほとんどおらず,ひとり客が多し。
映画は2時間35分という長丁場だったが,途中まったく飽きることはなかった。というか,映画自体は淡々と描かれているので,時々はふと息をつきたくなることもあったのだが,たいていそう感じる頃にズガーン!という凄まじい砲撃の音が響くので,結果として息つく暇もない映画になったのかもしれない(汗)。・・なんて冗談はさておき,映画自体に惹きつける力があることは間違いないだろう。この映画に関しては,ドイツ人監督が撮影し,ドイツ人俳優たちが演ずるリアリティと,ヒトラーを演じたブルーノ・ガンツの熱演が何よりだったと思う。
映画の主軸となっているのは,秘書ユンゲから見たヒトラー像である。彼女から見たヒトラーは,女性の気持ちを労る優しい好々爺であるとともに,徐々に追いつめられてヒステリックに部下を怒鳴り散らすしかなくなる哀れな独裁者でもある。だが映画は同時に,彼女が見てないはずの,直接戦場となった首都ベルリン市街の惨劇も描いている。そこでは兵士だけでなく,無関係な子供や母親にも情け容赦なく凄まじい爆撃が降り注ぐし,無知な少年志願兵が死闘を繰り広げ,それを止めようとした良心的な大人が自警団のリンチに合ったりする。しかし,ヒトラーやゲッぺルスは彼らの命など一顧だにしない。「市民になんて構うな。それは彼らの自業自得だ」「弱者は滅びろ。この世に意味あるのは強者だけ。同情は禁物」といったセリフには狂気を感じさせられる。だが言うまでもなく,それだってまだホンの一部なのだ。600万人ものユダヤ人を惨殺させた男や組織の本当の恐ろしさは,ほとんど感じられない。なもんで,この映画自体の完成度の高さには感心しながらも,片手落ちなんじゃないのという感が歪めなかった。。
ところで,ヒトラーが死んだ後もまだ30分は映画が続くし,ヒトラーを中心とした群像劇という描かれ方をしているのだから,タイトルは邦題の「ヒトラー最期の12日間」より,原題のDer Untergang(=downfall)の方がピンと来るのだけれど,いかがなもんでしょ?アレックス・ギネス主演の「ヒトラー最期の10日間」なんてのもあって,ややこしいんだよね。