花巻行き

山猫軒

夫の計画年休最終日。子なしで外に出る最後のチャンス。しかも打ってつけの好天ときたら行くしかない・・・と、花巻へ。前々から行きたいと思いつつも、いつでも行けるわ♪と一度も足を運ばなかった罠。花巻市郊外の博物館が集まった山間エリアに着くと、平日とは思えないほどの人。金曜でこんな状態なら週末はすごいことになっているのではないだろうか。客層は熟年ハイキングスタイルの集団、身障者の方々、カップルといったところで、平日のためか子連れは皆無。
ちょっとお得なニ館共通チケットを購入し、まずは宮澤賢治記念館へ。主だった資料は焼失してしまったのか、ほとんどがパネル写真展示だったが、若い頃の法華経への傾倒や味わいのある自作の絵など、今まで知らなかった一面を知ることが出来たのが収穫。「春の修羅」を新聞で初めて紹介したのが辻潤だったとか、賢治とエスペラント語の関係展示の中で大杉栄の名が出ていたあたりに、時代が感じられて面白かった*1法華経・地学・農学・文学に関わってきた賢治自身をはじめ、大正時代のインテリって興味を引かれる人物が多い。マルチ傾向大?
脇道の照葉樹林散歩コースを下ってイートハーブ館へ。ここは館に至るまでの水の流れを生かしたアプローチがすごく素敵だったが、展示の方は花巻温泉と賢治との関わりといったちょっとマニアックなもので、特段感じ入るものはなし。まぁ、温泉で飼われていたという巨大ヒグマの敷物とグスコーブドリ*2と温泉関連の資料が気にかかったくらい。
そこからさらに下って花巻博物館へ。ここは完全に夫の趣味・・・ということだったが、縄文土器から江戸時代まで、なかなかバラエティに富んだ資料が揃っていて興味深かった。内側が黒く燻された独特の弥生椀や、南部藩と伊達藩の藩境の様子を再現させたジオラマなどが印象に残った。歴史を習い始めたばかりの中学生なんかにお薦めという感じ。
これだけ廻って少し疲れたので、賢治記念館前のレストラン山猫軒でランチ。見かけはモロあの料理店だが、服を脱いだり粉をまぶされたりすることもなく、ちゃんと食事がいただけた。私はホロホロチキンカツセット、夫は蕎麦冷麺。ホロホロ鳥は賢治関連のネーミングと思いきや、近辺にしっかり生産農家があるそうだ。全体的に不思議な味わいだったが、悪くはなかった。価格的にも1000円前後と妥当なところ。ただコーヒーは400円とツーリスティックだったのでパス(貧乏性勃発)。
そこから北上川沿いのイギリス海岸へ。ネーミングはもちろん賢治由来。川岸だが「海岸」。花巻だが「イギリス」。気合と思い入れがあれば何でもアリなんだろうか。ドンと来い賢治マジック?・・・要は泥土がたまった川辺を指すそうだが、ゆったりした自然な感じを損なわない程度に手入れがなされた公園になっていて、その場でボーっと川を眺めているだけで幸せな気持ちになれる・・・しかし当時の賢治の心には修羅が・・・って、何を言っているんだか私υ
最後に花巻空港に寄る。お土産コーナーの雑穀を用いた花巻冷麺なるものが気にかかったが、夫が山猫軒で食べた蕎麦冷麺の味が微妙だったというのでスルー。どうも花巻は全市を挙げて雑穀の生産と販促に力を注いでいるらしい*3。展望室で自販機の100円コーヒーをいただきながら飛行機の着陸を見て帰宅。観客5人は私以外男性ばかりだったが、いずれも実に幸せそうに飛行機を眺めていた。これまで見てきた空港の中でいちばん小ぢんまりした花巻空港だったが、レストランのコーヒーは400円超。400円が花巻標準とでもいうのだろうか・・・。
TOEIC直前に何やってるんだか我ながら困ったものだが、まぁ人さまが働いているときにのんびり花巻めぐりさせてもらって、息抜きとしては最高である。あぁ楽しかった。 

*1:残念ながら、さすがに伊藤野枝は出てこなかった

*2:どうでもいいことだが、賢治の作品の中で特に気に入っているのが、「グスコーブドリの伝記」「雨ニモマケズ」「注文の多い料理店」なもので(あまり詳しくないのだけどυ)。メジャーどころの「銀河鉄道の夜」「セロ弾きのゴーシュ」「風の又三郎」らには、なぜかもうひとつ馴染めないのです・・・

*3:転作関連?