Kurt Vonnegut "SLAUGHTERHOUSE-FIVE"  195~215p  -7 読了

偶然だろうけど、どうもTralfamadore=トラルファマドア?星人的なものの見方は、今日L先生から薦められた映画の視点に近いような・・・もっとも、この本を読んでいたからこそ、話題がそういう方向に進んでしまったのかもしれない。いずれにせよ、どちらも日常自分たちが目にしている世界とは異なる四次元的世界や、その中にあり続ける存在を静かに示唆しているのではないかと思う。
トラルファマドア星人に誘拐され、タイムトラベラーとなった主人公、ビリー・ピルグリムだが、タイムトラベルといえば、ドラえもんのタイムマシンがいちばんに最初に頭に浮かんでしまう世代のものとしては、タイムトラベルで過去や未来に飛んだとき、その時空に生きる己と現在の自身が対峙せず、同一の人間として存在するというのがまず新鮮だった。だからこそ、「四次元の中で永遠にさ迷い続ける存在」みたいなものがありえるのだろうけれども。
ただ、ヴォネガット自身が戦争捕虜として得たドレスデン大空襲での悲惨な体験が元にあるためか、ドレスデンの惨劇を、原爆が投下された広島や大空襲を受けた東京の被害より大変なものだと何度も書いているあたり、個人的にちょっと引っかかる。そもそも、実際にそれだけの体験を持つ当事者にとっては、それぞれが個々の人生にとって大変な出来事なのだから、それをもう、あなた方の受けた被害よりこちらの方が大変だったんだよというような視点はどうだろう。しかも、それを空襲を仕掛けた側のアメリカ人のあなたが言うわけ?、とも思ったのだが、まぁ作者が書きたいことはそういったことを超越した世界だからして、あまりここいらに拘りすぎてはイカンのだろう。
作中頻繁に出てくる売れないSF作家、Kilgore Trout=キルゴア・トラウト?や、先のトラルファマドア星人などは、ヴォネガットの他作品にも登場するそうなので、楽しみである。手塚治虫作品における、ヒゲオヤジやヒョウタンツギみたいな存在なのかしら。