Doris Lessing "The Grass is Singing" 61~82p -4

都会でキャリアを築いてきた南アの白人女性として、結婚するまでネイティブたちを自分と同じ人間だと感じたことのなかったメアリー。が、嫁ぎ先の農場では、今まで自分が常識と思っていたことがまったく通じなくなる。彼女の頑なさがもたらす苛立ちと不幸のサイクルが詳細に描かれていて、非常に痛々しい。
それは一部、自分自身の生活にも当てはまるだけに、読んでる自分もイタくなる。結婚は決して甘いだけのものではなく、それによって余儀なく求められる価値観の転換が今まで築き上げてきた自己の存在意義までも揺さぶるのだ。
なんせ隣の家にさえ車でないと行けないという孤立した田舎での貧しい農場生活、自分と同じ価値観を持つ人は周囲に皆無という、ものすごい環境ですからね・・・。そこまでやるかというような設定だが、そういうこともありえると思わされるだけの説得力がある。