Paul Auster "Moon Palace" 87P~98P -14

ジンマーに世話になる日々が長くなるにつれ,居心地の悪さを感じ始めるマーコ。だが,この辺の心境というか,友人間の力関係は非常に複雑だ。自分が以前,ストイックに "give up the struggle=成り行きに身を委ね" ていた姿に,ジンマーは "intimidated=脅かされ" ながらも "overwelmed=圧倒され" ていた,とマーコは考える。だが今回,ジンマーは自分の世話を引き受けることで,上位に立つことができたのではないかと。実際,ジンマーの言葉の端々で,鋭い優越感のようなものが顕著になる。ま,"godless saint" マーコにとっては,悔い改めに必要な罰にしか感じられないようだが。
そんな折,ジンマーに鬱陶しい仏語翻訳のバイトが舞い込む。マーコはこの仕事を引き受け,その代金をすべてジンマーに託すことで,二人の間のバランスを修正し,自らも立ち直ろうとする。バイト自体は,フランス領事館の構造改革に関する100ページほどの文書で,中身も文章もひどいものだが,仕事が困難であればあるほど,喜びを感じられるマーコなので,問題ない。
こうして毎日の生活リズムができてきた頃,長らくご無沙汰だったキティとも再会し,恋人関係になる。いちゃいちゃ。若いです。もはや絶好調で,つける薬がない。さらにバイトを無事終え,3人で豪勢な打ち上げパーティまで開いてしまう。会場は,以前「最後の晩餐」を全部吐き戻した,あの「ムーン・パレス」(中華レストラン)。ジンマーが毛沢東トロツキーについて蕩々と語り続けるのを聞きながら,キティとニヤニヤ。ああ,もう読んでらんないよぉ。
コロンビア大学の "alumnus=卒業生" 資格で,なんとか住み込みの仕事も探し,ついにジンマーの部屋を後にする,というところで第4章に突入だ。