Paul Auster "Moon Palace" 99P~108P -15

マーコの見つけた職は,目と足が不自由な86歳の老人エフィング氏の介護兼お話相手役。介護といっても車椅子を押す程度で,メインの仕事は話し相手。基本的な身体介護と家事は,別に住み込みで働いているヒューム夫人の役割である。で,部屋と食事が付いて週50ドル(しかもキティのいる寮から近い!)。
しかし,このエフィング老人(ちなみに, "effing" は "fucking" の婉曲表現)がどうも相当な曲者のようで,登場早々死人のふり(彼の得意技らしい)だし,採用面接では散々 "combative(好戦的な)" 質問を浴びせかける。
Are you a man of vision?
から始まって,自分の見かけ(年寄り,眼帯をしている,車椅子に乗っている等々)を軸に,マーコの知性と想像力をねちねち試すのは,まあ面接だから当たり前かもしれないが,その合間に何度も,自分の恐ろしさや嫌らしさを異様にアピールする。
I might not be able to see or walk, but I have other powers, powers that few men have ever mastered.…(中略)…Mental powers.
で,そりゃ「テレキネシス」ですかとマーコが突っ込むと,すかさず1965年の停電は自分が引き起こしたと言う。
Even thoughts give off an electrical charge. If they're strong enough, a man's thoughts can change the world around him.
って,なんか以前マーコが言ってたことと似ているかも(参考:id:yurin1968:20041018)。さらに最後の最後まで,
If you take you on, Fogg, you'll probably grow to hate me. Just remember that it's all you for your own good. There's a hidden purpose to everything I do, and it's not for you to judge.
と。…かなり来てます。もう,オースターに変人を書かせたらかないません。