Paul Auster "Timbuktu" 12~22p -2

なんとなく最初に手にした「犬」をずるずると読んでいる。今まで読んできた”New York Trilogy”,”Liviathan”,”Moon Palace”などと比べると,言い回しがちょっと難しいかな。英語自体はplainなんだけど,逆説的な表現とか,比喩的な表現が多いように思う。こういった表現をあえて「犬」Mr.Bonesのモノローグとして用いることで,彼の知性の高さを表しているのだろうか。

内容の方は,Willyの生い立ちから,彼が改名するに至った経緯まで。薬でボロボロになり精神病院から帰ってきたばかりのWilliam(当時)が,母親の家でテレビを見ている最中のこと。なんと画面のサンタクロースが突然,「ブルックリンに住む,William Gurevitchさん,あなたに話してるんだ」と直接語りかけてくる。んなことあり得んとテレビにむかって散々サンタを罵倒すると,サンタは彼に反論してくるではないか。話せば話すほど,サンタが本物であると確信せざるを得なくなり,最後は敬虔さのあまり涙してしまう。Williamは,この事件をきっかけに自らsaint(=聖人)になろうと決意し,Willy G. Christmasという名に変えたのだ,とMr.Bonesは語る。どう考えてもあり得ない話。でも「犬」は本当だと信じている。