20度の「明月」,求む

もう10年近く前になるが,宮崎に住んでいたことがある。そこで病みつきになってしまったのが,芋焼酎。朝ドラ「わかば」の飫肥の実家が焼酎の造り酒屋を営んでいるように,宮崎南部から鹿児島一帯は芋焼酎のメッカである。全国的に焼酎といえば25度だが,なぜか宮崎では20度の焼酎が一般的。20度の方が低価格なので,県民平均所得の高くない宮崎で普及しやすかったという噂を聞いたこともあるが,定かではない。そんな20度焼酎だが,ロックでサクサク飲むにはこれが実にイイ。宮崎で味を占め毎日毎日飲んでいたら,我々夫婦の体もすっかり20度の芋に馴染んでしまった。有名どころ「霧島」をはじめ,「日向木挽」,「飫肥杉」,「正春」,「松露」等など。目につくモノを片っ端から飲んできた。が,最後に行き着いたのは明石酒造の「明月」。ほどよいコクと香りがいちばん体に馴染むという感じ。いろいろ浮気しても,いつもこの「明月」に戻ってきてしまうのだ。
転勤で宮崎を離れてからも,ネットで見つけた日向の問屋に細々と「明月」を送ってもらってきた。しかし,この問屋が曲者。長年取引しているというのに,うちの名前をまったく覚えてくれないは,取引条件は悪化していくはという怪しげな商売ぶり。取引当初はパック6本を同時注文すると送料無料だったのが,次は送料かかるようになり,その次は送料とは別に代引き手数料もかかると言う。しかもこの代引き手数料はどんどん上がっていき,最終的には1365円にまでなった(振り込みは確認が面倒なのか,嫌がる)。通常,取引が増えるに従ってサービスは良くなっていくものだと思うが,こうである。「宮崎式」とでも言うべきか(マジメで粘り強い「岩手式」とは対極)。…あの県全般に言えるが,はっきり言って商売に「やる気」というものが欠けている。商売人の街「大阪」で生まれ育ったワタクシには,もう相当なカルチャーショックなんだよねぇ*1…。
閑話休題。くだんの問屋のこんな対応に嫌気が差し,直接「明石酒造」に問い合わせをしたこともある。しかし,基本的に問屋や酒屋にしか卸さず直販はしないとの返答。というか,「あんたんとこの住所を聞いて,振り込み確認して,宅配手続きするのが面倒なんだわー」という感じ。間違いなくここも「宮崎式」であった。
こんな対応ぶりが嫌で嫌で,その辺の「白波」や「いいちこ」,「よかいち」,あるいは趣向を変えて「真露」といったところでお茶を濁し堪え忍ぶわけだ。しかし,何ヶ月か飲まないでいると禁断症状のようなものが現れ*2,無性に「明月」が飲みたくなってしまう。うああ
実は,最近もまた「明月」が飲みたくて堪らなくなり,先の業者に連絡を取った。ところが倒産でもしたのか,電話が一向に通じない。で,昨日からネットで検索しまくっているのだよ,必死で。どうやら「明月」はどこぞも品切れの様子*3。最近のヤフオク偽焼酎事件に象徴されるように,黒木が「百年の孤独」を出した頃から,ちょっとずつ焼酎界がオカシナコトになってきているのかもしれない。…そんなもんは一部のプレミア付焼酎だけで,我々が普段飲みするものとは別世界のことと思っていたのだけれど,そうも言ってられなくなってきたのだろうか。
そもそも宮崎にいた時には一升1000円弱で買えた焼酎が,酒税の関係でどんどん値上がりし,今や1400円以上。前回注文時には,それに送料やら代引き手数料が入り,1800円以上になった。ほとんど倍近い値段じゃないか! もう,水代わりにサクサク飲むなんてできやしない。…もっとも,岩手で宮崎の焼酎が飲みたいなんてこと自体,贅沢なのかもしれないな。あっ,でもこのあいだマックスバリュ某支店で「20度の飫肥杉」を見つけた*4。スポット入荷だったようで,その後は見かけないが…。きっと酒の神様が,岩手に住む哀れな焼酎飲みのところに,気まぐれでやって来てくれたのだろう。
ああホントに,コタツに入りながら明月(20度)のロックが飲みた〜い!

*1:「いらっしゃいませ」「お待たせしました」の挨拶はめったに聞けない。まず客が「こんにちはー」と声をかけるのが基本。商売のスタンスとして,「お客さんに買っていただいて儲けさせてもらってます」というのではなく,「親しい人に品を分けてやっている」という印象。当初は衝撃的であったが,慣れると意外に心地よいんだな,これが。転勤後も「こんにちはー!」と言って店に入ってしまう習慣が続き,恥ずかしい思いもしたが,これも敷居の高い器屋に入るときなどには結構役立ったような気がする。先の問屋みたいな対応はヤだけど

*2:詳しく訊かないでください

*3:いわゆる「プレミアムタイプの焼酎」はあるようだが,なんせ量を飲みたいyurin一家のターゲットは,あくまで「20度明月パック6本ケース入り」。パックはお取り寄せの基本だね(通の方には怒られそうだけど)。むはは

*4:県外で20度の焼酎が見つかるなんて奇跡的!「わかば」のお陰か?