Paul Auster "Timbuktu" 22~33p -3

Willyの母が亡くなるまでの思い出話がメイン。Willyの両親は貧しいユダヤポーランド人。ナチスの追撃を逃れてアメリカにやってきた。アメリカで生まれ育ったWillyにとっては,英語もおぼつかない両親はややもすれば疎ましい存在。父は早くに亡くなるが,そんな状態だったためか,12才のWilly(当時はWilliam)にとって,あまりショックは無かったようである。
精神病院を出たあとは行き場がないので,仕方なく母親のアパートを拠点にしながら放浪生活を繰り返してきたWilly。母のアパートでサンタと運命的な出会いをしてからは,改名だけでなく,腕にサンタの入れ墨までしてしまったらしい。これが母親には大打撃。ユダヤ人にとってサンタはあくまで「向こう側の存在」なのだ。
Santa Claus was from the other side. He belonged to the Presbytherians and the Roman Catholics, to the Jesus-worshipers and Jew-haters, to Hitler and all the rest of them.
彼女にとって,サンタはヒトラーと同レベル。さらに,サンタが一度息子の心に入り込んできたからには,次はEasterだと脅える。この辺の宗教観がなかなか興味深い(Willy自身はそこまで考えてないのだが)。
Mr.Bonesとの出会いは,7年前,放浪生活をするうちに身の危険を感じたWillyが,ボディーガードとして飼いはじめたのがきっかけ。子犬時代は,Willyとその母親とともにアパート生活をしていたようで,2人と1匹の暮らしぶりも描かれている。
父と違って母の死は,Willyに大きな影響を与えたようだ。